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禅への鍵

◆『禅への鍵 』ティク・ナット・ハン(春秋社、2001年)

マインドフルネスの実践という面からも、その理論的な裏づけという面からも、たいへん分かりやすくエッセンスがまとめられている。禅を語りながら、日本の従来の禅書とは一味違う切り口で禅の真髄に迫っている。にもかかわらずここに語られているのはまぎれもない禅そのものだ。と同時に中観や唯識との関係が明確にされ、さらに気づきの瞑想を実践するものにとっても大いに参考になる。

もともと欧米の 読者のために書かれた本なので、現代の若者にも読みやすいだろう。その理論的な 説明はきわめて明快だ。禅を中国から日本へという伝統的な視点から解きはなって、ヴェトナムでの発展、欧米での展開、気づきの瞑想として実践という広い視野から見直す新鮮さに溢れる本だ。

実践的には、ティク・ナット・ハンはマインドフルネスを強調する。マインドフルネスは、サティの英訳である(漢訳は念)。仏教においては、マインドフルネス (気づき)があるかどうかが最も大事なことだ。

「いまここ、現在の瞬間に起きて いることにはっきりと気づいていること」。 「私たちが歩くときには、自分が歩いていることにはっきり気づいています。自分 たちが食べているときには、食べていることにはっきり気づいています。‥‥他の 人たちは、自分たちが歩いたり、食べたり、洗ったり、据わったりするとき、大抵 は、自分のしていることに気づいてはいません。」(釈尊と当時思想家の問答より)

何事も心を専一にして行う、はっきりと目覚めて生きる態度から深い気づき生まれ、 存在の真理があらわになる。日常の生活や仕事は、そういう気づきの課題を遂行する場である。目覚めるとは、統制のきかない思考という習慣病から、明晰で純粋なこころの状態に戻ることだ。 なぜマインドフルネスが大切なのかを禅の伝統や仏教の理論的な側面から簡潔に説得力をもって語るのが本書だ。

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