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    2017.03.19 Sunday/ -/ / -/ -/ -/ -/ by スポンサードリンク

風土―人間学的考察2

◆『風土―人間学的考察 (岩波文庫)

引き続き「日本文化のユニークさ8項目」のうち、第6番目に関連して、和辻哲郎の『風土―人間学的考察』を取り上げ考えていきたい。

(6)森林の多い豊かな自然の恩恵を受けながら、一方、地震・津波・台風などの自然災害は何度も繰り返され、それが日本人独特の自然観・人間観を作った。

和辻は、モンスーン的風土が人間に及ぼす影響の一般的性格について論じたことを基にして、その日本的な特殊形態について具体的に検討していく。しかし和辻の具体論に入る前に、前回触れた疑問の一つについて少し考えてみたい。それは、和辻の論がモンスーンとその湿潤性とに一元化しすぎているのではないかという疑問であった。和辻は、モンスーンの湿潤は、生命に豊かな恵みを与えると同時に、暴風雨や洪水として暴威をふるう。その二重性が人間に、自然への対抗心を失わせるというものであった。しかしたとえば日本列島に住んだ古代人が、この湿潤が恵みであると同時に破壊力にもなるから対抗する気力がなくなると感じたとは考えにくい。むしろもっと素朴に、周囲の自然の恵みによって自分たちは生かされているが、同時に地震や津波を含めた自然の破壊力よって大きな苦しみもなめる、と感じていたに過ぎない。つまり自然の「湿潤性」がもっている二重性を明確に意識していたのではなく、それ以前に、恵みと破壊を同時にもたらす自然そのものへの畏敬が、荒魂(あらたま)・和魂(にぎたま)という、神の極端な二面性への信仰となり、また日本人独特の無常観をも醸成したのである。

さて、こうした疑問点を踏まえた上で日本についての和辻の風土論の具体的分析に入っていこう。日本においてモンスーンは、「台風」とよばれるような、「季節的ではあるが突発的」で猛烈な自然の力となる。一方でそれは日本海側に世界でもまれな大雪をもたらす。日本はモンスーン域の中でも大雨と大雪という二重の現象とともなうことで特殊な風土をもつ。それは「熱帯的・寒帯的」な二重性格と呼ぶことができる。

この二重性格はまず植物のあり方に明白に現れる。強い日光と豊富な湿気を条件とする熱帯的な草木が旺盛に繁茂し、盛夏のそれは熱帯地方とほとんど変わらない。その代表は稲である。一方では、寒気と少量の湿気とを条件とする寒帯的な草木も旺盛に繁茂する。麦がその代表である。こうして大地は冬には麦と冬草とに覆われ、夏には稲と夏草とに覆われる。しかしそのように交代し得ない樹木は、それ自身に二重性格を帯びる。たとえば熱帯的植物である竹に雪の積もった姿は、熱帯の竹に見られない弾力的な曲線を描く日本的な竹である。

日本のモンスーン的風土のこの二重性格は、人間の「受容的・忍従的」なあり方にも二重性格を与えるという。

日本の人間のモンスーン的な「受容性」は、第一に「熱帯的・寒帯的」という二重性を帯びる。それは、単に熱帯的な、単調な感情の横溢でもなく、また単に寒帯的な、単調な感情の持続性でもない。日本人の感情は、「豊富に流れ出でつつ変化において静かに持久する感情」である。四季おりおりの季節季節の「変化」が著しいように、日本人の受容性は「調子の速い移り変わり」といった性格をもつ。

それは大陸的な落ち着きを持たないとともに、きわめて「活発であり敏感」である。活発敏感であるがゆえに「疲れやすく持久性を持たない」。しかもその疲労は刺激のない休養によって癒されるのではなく、新しい刺激・気分の転換などの感情の変化によって癒される。しかしそのような変化の中で、もとの感情はひそかに維持され、その意味で「持久性を持たないことの裏に持久性を隠している」という。

第二に日本人の「受容性」は、「季節的・突発的」である。変化においてひそかに持久する感情は、絶えず他の感情に変転しつつ、しかも同じ感情として持久する。そのために、単に季節的・規則的にのみ変化するのでもなければ、また単に突発的・偶然的に変化するのでもない。それは、「変化の各瞬間に突発性を含みつつ前の感情に規定させられたほかの感情に転化する」という。

次に日本の人間のモンスーン的な「忍従性」もまた、風土の二重性格に対応した二重性をもっているという。

第一にそれは、「熱帯的・寒帯的」な二重性格である。すなわち単に熱帯的な、したがって非戦闘的なあきらめでもなければ、また単に寒帯的な、気の永い辛抱強さでもない。「あきらめでありつつも反抗において変化を通じて気短に辛抱する忍従」である。暴風や豪雨の威力は結局人間を忍従させるのだが、しかしその台風的な性格は人間のうちに戦闘的な気分を湧き立たせずにはいない。だから日本の人間は自然を「征服」しようともせずまた自然に「敵対」しようともしなかったにもかかわらず、なお戦闘的・反抗的な気分において、持久的ならぬ「あきらめ」に達したというのである。日本の特殊な現象としてのヤケ(自暴自棄)は、このような忍従性を明白に示している。

第二にこの「忍従性」も、また「季節的・突発的」である。反抗を含む忍従は、それが反抗をふくむというその理由によって、単に季節的・規則的に忍従を繰り返すのでもなければ、また単に突発的・偶然的に忍従するのでもなく、「繰り返し行く忍従の各瞬間に突発的な忍従を蔵している」という。忍従に含まれた反抗はしばしば台風的なる猛烈さをもって突発的に燃え上がるが、しかしこの感情の嵐の後には突如として静寂なあきらめが現れる。

「受容性」における季節的・突発的な性格は、直ちに「忍従性」におけるそれと関連するのである。反抗や戦闘は猛烈なほど嘆美せられるが、しかしそれは同時に執拗であってはならない。「きれいにあきらめる」ということは、猛烈な反抗・戦闘をいっそう嘆美すべきものたらしめるのである。すなわち俄然として忍従に転ずる事、言い換えれば思い切りの良い事、淡白に忘れる事は、日本人が美徳としたところであり、今なおするところである。そのもっとも顕著は現れ方は、淡白に生命を捨てるという事である。

さて以上が、和辻の分析による、モンスーン的風土の日本的な特殊形態が日本人の性格に及ぼす影響の大筋である。私がこの部分を読んでの印象は、参考になりそうなことが書かれているが、たいへん分かりにくいということだ。みなさんはどう感じただろうか。私が分かりにくいと感じる理由の一つは、「受容性」と「忍従性」というそれぞれの言葉の意味が曖昧で、その違いもあまりはっきりしないことによる。

とりあえず辞書的な意味として「受容性」とは、周囲の事物をそのまま受け入れやすい性質であり、「忍従性」とは、耐え忍びがまんして従う性質のことである。風土との関係で言えば、それらは与えられた自然環境をそのまま受け入れる性質であり、与えられた自然環境にがまんして従うことである。受入れるにしても従うにしても、それほど大きな違いはない。ほとんど同じである。和辻は、「湿潤」が「自然への対抗」を呼覚まさず、「受容的」にすると言っているが、これは「忍従的」にすると言ってもほとんど同じである。だから、これら二つをわざわざ分けて語る和辻の論に説得力がないのではないか。

和辻は、日本人の「受容性」の二重性格を語るところで、「受容性」がどのように二重の性格を帯びているかを全く語らず、ただ感情が変化しやすいが、一方で持久する面もあると言っているに過ぎず、これでは何ら受容性の説明にはなっていない。

一方、「忍従性」の二重性格については、「あきらめでありつつも反抗において変化を通じて気短に辛抱する忍従」という難解な表現を使っている。これは、基本的にはあきらめであるが、ときに突発的に反抗を繰り返すぐらいの意味だろうか。これは、俗に「日本人は熱しやすく冷めやすい」と言われるのと対応しているかもしれない。しかし、そういう性質が、風土の「熱帯的・寒帯的」、「季節的・突発的」という二重性から、具体的にどのように生まれてくるのかについては充分な説明がなく、ほとんど説得力がない。しかし、日本の風土と日本人の性格が大雑把に何となく、そんな対応関係で考えるのも面白そうだなというヒントにはなるかもしれない。

私たちが和辻の風土論を参考にできるのは、そこに示された日本人の性格との関係性の大枠をヒントにしながら、ある程度確実に言えることは何かを検討していくことだろう。次回以降、そんな作業を行ってみたい。

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