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日本人にとって聖なるものとは何か

◆『日本人にとって聖なるものとは何か - 神と自然の古代学 (中公新書)

著者・上野誠氏は、日本人が日本的だと意識している思考法の源流は、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』に表れているという。これらの文献から古代的な心のあり方、正確には7世紀と8世紀の社会を生きた人々が聖なるものをどのように認識していたのかを明らかにすることが、本書の目的だという。

この本が興味深いのは、上に挙げたような文献を丹念に読むことによって、古代人が自然や神をどのように認識していたかを見事に浮かび上がらせているからだ。そして私自身の関心から興味深いのは、ここで描かれるような古代人の思考法から、文献的には検証できない縄文人の思考法がどうであったかを、ある程度推測できそうだ思われる点だ。

本格的な水田稲作文化が開始したとされる弥生時代の始まりを紀元前五世紀頃とするなら、縄文時代が終わったのは『古事記』が成立した紀元712年よりも千年以上も前だ。しかし一万年以上続いた縄文人の思考法が、この時代に消滅していたとは考えにくい。むしろ縄文人の心のあり方が基盤となってこの時代の人々の思考法が成立していたと考えるのが自然だろう。

多くの宗教学者が「日本の宗教は、その根底にあるものはすべて同じで、万物生命教というべきものであり、山川草木、山河大地も神仏である」と言い切るというが、そうした古代人の心のあり方は突然に出現したのではなく、一万年の長きに渡り「母なる自然」に抱かれながら生きた縄文人の心のあり方を基盤としているというべきであろう。

7・8世紀ごろに生きた日本人にとって、人もモノもすべてが霊的な存在だった。カミもオニも花も鳥も、要するにすべてが霊的・人格的存在だったという。たとえば著者は、『万葉集』の、天智天皇が皇太子時代に作ったとみられる歌を紹介している。

香具山は 畝傍(うねび)ををしと 耳成(みみなし)と 相争ひき 神代より かくにあるらし 古(いにしえ)も 然(しか)にあれこそ うつせみも 妻を 争ふらしき

香具山、畝傍山、耳成山の大和三山は、神代から互いに妻を争った。古もそうだったのだから、今も人は妻を争うのだという内容だ。これは現代人がするような「擬人法」ではなく、古代人の自然な発想ととらえるべきだという。生命あるものとないものとの垣根がきわめて低いのである。

生命あるものとないものの垣根が低いだけではない。神もまた垣根で仕切られていない。『古事記』に登場する神々は、山であり、木であり、風である。神々は、恋もし、妬みもし、罪を犯す。糞や尿や吐瀉物からもカミは生まれる。存在しうるすべてが神となり得え、無限にカミが生まれ続ける。

『古事記』の国土形成神話では、男女二神の性交によって島々が生まれたという。そしてイザナミノミコトは、火の神を産んで死ぬ。女性器が焼きただれて病み、嘔吐し、大小便を排泄して死を迎えた。その吐瀉物や排泄物からも、次々に神は生まれた。その神々は豊かな食物を生みだす女神であった。

ところでイザナミノミコトが産み落とした島々にはそれぞれに神名が記されているという。島産みは、同時に神産みであるということだ。島と神が対応し、地名と神名が対応する。そして、それぞれの土地に、それぞれの神がいる。地名があるということは、そこに神がいるということであり、その土地土地の神は「くにつかみ(国つ神)」と呼ばれた。

『万葉集』に「楽浪(さざなみ)の 国つ御神(みかみ)の うらさびて 荒れたる都 見れば悲しも」という歌がある。「楽浪(大津の宮のあった一帯)の国つ神のお心が、荒(すさ)んでしまって、荒れてしまった都を見るのが悲しい」という意味だ。土地の神の心が荒れれば、その土地もまた荒れてしまうというのである。

このように「人格」や「神格」があるように、土地にも「地格」というべきもの認められていた。その土地の霊を祀ることが重んじられるのは当然であったろう。このような考え方は、日本の宗教の根底にあって、現代でも多くの神社が、それぞれの地域の人々によって支えられているのも、そのような考え方が多かれ少なかれ受け継がれているからだろう。

以上は、著者の考察の一端に触れたにすぎないが、当時の文献に沿って古代人の心のあり方をあぶり出すという方法は、説得力がある。そして私にとっては、万葉の時代ですらこうなのだから、本格的な稲作農耕に至らず、周囲の自然により依存していた縄文時代の人々は、山川草木とともにいます神々とさらに生き生きと交流をしていたのだろうと想像させてくれるものであった。

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