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アニメがフランスに与えた「共感」と「恐れ」(2)

◆『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす

前回触れたように1978年にフランスのTVで「UFOグレンダイザー」が始まると爆発的な人気となった。それはなぜだったのか。日本では「マジンガーZ」ほどはヒットしなかった「グレンダイザー」がフランスで大ヒットとなったのは、登場人物へのフランス流の命名の工夫などの小さな改変が効果的に働いたというフランス側の要因もあったようだ。

しかし著者がとくに関心をだくのは、日本のアニメ「グレンダイザー」のストーリーがフランス国内やアメリカで作られた作品と根本的に違うという点だった。それはこの作品が見る者にもたらす感情的な没入感の強さ、一言でいうと「共感」できる度合いの強さだったと著者はいう。

それまでのフランスの子供向けアニメは、善人と悪人がはっきりしていて、親の代わりに物事の是非を教訓的に教えるような構造のものが多かった。ところが「グレンダイザー」では、登場人物らの意味や役割は固定的ではなく、ケンカ相手が親友になったり競争相手になったりして、その関係がつねに揺れ動く。

そして悪役さえ共感の余地が残されていた。悪人だがその人間性に共感できる人物、あるいは自分なりの理想を求める人物として描かれていった。「グレンダイザー」ではないが、「機動戦士ガンダム」の中の、敵でもあり英雄でもあるシャア・アズナブルがその代表だろう。

また主人公の設定も複雑で「グレンダイザー」のデュークは、自分の星から地球に来るとき、自分以外の星の住民はみな殺されて自分だけが生き残ったが、自分も重い死の病いを抱えるという運命を背負っている。見るものが自分のことのように「共感」できる主人公は、それ以前のフランスのアニメにはなかったという。

日本の多くのアニメは多かれ少なかれ、見るものを「共感」させる同様の力をもっていた。悪人さえも、もしかしたら友人になれたかもしれない人間性をもって描かれる。それらは、フランスの作品とは世界観が根本的に異なっていたのだ。

日本の製作者は日本の子供向けに作ったのであり、海外でどんな反応を得るかを作る段階で意識してはいない。しかしフランスの子供たちは、その日本的な世界観と物語に深く「共感」してしまった。それは、フランス社会にはこれまでなかった世界観だった。日本アニメへのバッシングは政治的なかけひきと絡み合って利用された面もあるが、その背景には、従来の西欧にはなかった異質の世界観に子供たちが没入していくことへの、フランスの大人たちの恐れがあったのではないかと著者は見る。

フランス社会は、ルソーの社会契約説やフランス革命以来、「個人の権利」という考え方を国の根幹に据える。自分にも他者にも個人の権利があるから、相手の権利を傷つけないかぎり自分を主張する自由と権利があるが、自分の権利を侵かそうとするものは、はっきりと「敵」とみなされる。そうであればたとえ王であろうと敵として断罪される。

ところが日本では、権利の主張よりも共感の雰囲気を重視し、共感への信頼によってコミュニケーションを作り上げようとする。他者との共感をベースに社会を成り立たせる日本人は、敵役にも共感できる側面を含ませ、それが自ずと物語の魅力や深みになるのだが、それは元来日本人がもっている世界観や価値観の反映である。日本人は「個人の権利意識が希薄だ」とよく言われるが、逆にフランス人は権利意識を主張しあうことにプレッシャーを感じており、日本人の価値観が新鮮に映るのかもしれない。

フランスのように個人同士も契約関係を基盤にする社会では、日本アニメのような共感をベースにする物語は圧倒的に異物であり、しかしだからこそ共感や感動の度合いが深く、面白かったのだと著者はいう。それはフランスや西欧世界が持つ世界観の欠陥を埋め合わせ、フランス人のアイデンティティーの欠けた部分を補う働きをもった。だからフランス人は、日本のアニメを見てある意味でホッとしたのだという。

以上の見方は、フランス人「オタク」の第一世代を自認する著者が日本アニメを夢中で見ながら育った体験を踏まえているので重みがある。しかし著者を含めた新世代の子供たちがアニメに夢中になればなるほど、親たちは危機感を感じた。その危機感の根元がどこにあるのか親たちが自覚していたかどうかはわからない。しかし、日本アニメの共感をベースにした世界観そのものが子供たちを夢中にさせ、しかもそれがフランス共和国の基本的な神話を崩しかねないという漠然とした「恐れ」が、極端なジャパンバッシングを引き起こしたと著者は見ている。

そして日本アニメへの激しいバッシングによってアニメ放映量は激減する。しかし皮肉なことにアニメに目覚めた子供たちは、その関心を日本のマンガに向け始め、結果としてフランスでは日本マンガの大ブームが沸き起こるのだ。

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