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アイデンティティ危機:アニメがフランスに与えた「共感」と「恐れ」(4)

◆『水曜日のアニメが待ち遠しい:フランス人から見た日本サブカルチャーの魅力を解き明かす

フランス人から見た日本のイメージには両極端があるという。日本はまず遥か遠い国という圧倒的な距離を感じさせるが、その距離は良い方にも悪い方にも作用する。良い方に転じたとき、日本はとてもエキゾティックで、自分たちとは異なる価値観や深い文化を持った国と見える。浮世絵に触発されてジャポニズムがフランスを席巻した背景にはそれがあり、そのイメージは今に引き継がれているだろう。

他方、その距離感が悪い方に転じると、自分たちには理解できない不気味な国となる。日本を非人間的な国と感じる人は、著者が子どものころにもかなりいて、日本人はロボットみたいに感情がないとうステロタイプの偏見がとても強かったという。こうした否定的な印象と深い文化を持つ国という肯定的な印象とが状況毎に入れ替わるのが一般的なフランス人だという。ジャパンバッシングは、その否定的なイメージが前面に出た事件だったともいえよう。

ところで、これまで見てきたように日本のアニメやマンガは、かつてフランスに存在しなかった価値観や世界観を読者に与えたからこそ支持され、共感されてきた。しかしそれは、フランス社会に馴染むことのできない若者たちの格好の避難場所にもなっているのではないか。毎年パリで盛大に催され近年は20万人を超える来場者がある「ジャパンエキスポ」は、日本でもよく知られるようになった。そこに集まる若い世代は、コスプレやヴィジュアル系の格好など何の躊躇もなく楽しみ、無批判に日本のマネをしていると著者はいう。

日本人の場合は、「オタク」であろうと日本人であることに変わりなく、日本の中でほとんど無自覚にそのアイデンティティを保つことができる。むしろ「こんな作品が読める国に生まれてよかった」と自分のナショナル・アイデンティティを強化することもありうる。

しかしフランスのオタクは、オタクであることによってフランスという文化秩序の外に出てしまう可能性がある。日本人は日本のサブカルチャーにどっぷり浸かってもアイデンティティ危機には陥らないけれど、フランス人の場合はそれがアイデンティティの危機を招くこともあるというのだ。「ジャパンエキスポ」などで無邪気に得意げにコスプレする若者には、一種の逆ナショナリズムの態度があるのではないか。フランスの価値観に合わなければ日本に合わせ、日本にどっぷり浸かればいい。そう思うことでそこを避難場所にし、依存する。日本の過度な理想化には、フランス社会に居場所がない若者たちのアイデンティティの危機という問題が潜んでいるのではないか。

著者自身、これは少し大げさな見方かも知れないと断っているが、逆にいえばそういう危惧を感じざるを得ないほどに、日本のサブカルチャーの影響が大きくなっているということだ。これはフランス国内の問題だと片付けることもできるが、私たちにとって大切なのは、この問題も含めて全体として日本のアニメやマンガがフランスや世界にどれほど大きな影響を与えているかを、過大にも過小にも偏らずに理解することだと思う。この本は、フランスのオタク第一世代を自認し歴史家としての分析力を持つ著者が、自分のアニメ体験とフランス全体での出来事を適度に交差させつつ広い視野から語っており、その意味でも重要だと思う。

本ブログでは、日本のマンガ・アニメの発信力の理由を以下の視点から考えてきた。

\弧燭般祇弧拭⊃祐屬搬召寮犬物を明確に区別しない文化、あの世や異界と自由に交流するアニミズム的、多神教的な文化が現代になお息づき、それが豊かな想像力を刺激し、作品に反映する。

⊂さくかわいいもの、子どもらしい純粋無垢さに高い価値を置く「かわいい」文化の独自性。

子ども文化と大人文化の明確な区別がなく、連続的ないし融合している。

そゞ気筌ぅ妊ロギーによる制約がない自由な発想・表現と相対主義的な価値観。

ッ療エリートにコントロールされない巨大な庶民階層の価値観が反映される。いかにもヒーローという主人公は少なく、ごく平凡な主人公が、悩んだり努力したりしながら強く成長していくストーリが多い。

今回取り上げた本は、日本のアニメやマンガのとくに上のい筬イ亡愀犬垢詁団Г鮹者の体験を踏まえつつ語っている。日本の巨大な庶民階層の価値観とは、契約よりも信頼を重視し、敵対する相手にも何かしら共感し和解し合える要素を見出そうとするものであり、フランスの子供や若者は、そうした価値観が反映したアニメやマンガに、自国の作品に感じ得ない「共感」を見出したのであった。

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